ジェームズ・ナクトウェイ講演会 水戸芸術館 James Nachtwey #art #artweet #art_jp #contemporaryart

降り出した雨を逃れるように、高速バスは東京駅から北へ北へ
ジェームズ・ナクトウェイの講演会@水戸芸術館へ  (さかぐー)
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生ナクトウェイは、背が高くて、ジーンズと赤茶色のシャツに髪をきちんと整えた人だった。準備してきたテキストを読み、合間に作品のスライドショーを挟み、流れもスムーズで通訳も完璧。正義感溢れる戦場写真家の魂の熱い叫び!みたいなものを期待してた人には肩すかしだったか。。。

ナクトウェイが語る声は、淡々としてとても静かだ。

「現場で写真を撮るときに大切なのは、相手へのリスペクトです。私の眼差し、身振り、声のトーンや動き方が、《私は敵ではない、その場に必要な人間だ》と人々に伝える。そして受け入れてもらう」

だんだんわかったのだが、ナクトウェイは話をするとき決して特定の対象を非難したり、これが正しい、あれが間違っているという正義を決して口にしない。言葉が自分の写真よりも饒舌にならないように、慎重に言葉をそぎ落とす。だからこそ、彼が選んだ断定的な言葉には、真実の重みがある。

「戦争は、破壊と暴力、苦痛、そして死である」

どんな大義名分があろうと、戦場と呼ばれる場所はどこも同じだ。

9/11の時、ナクトウェイはNYにいた。
「グラウンドゼロの現場に立ち、私は怒りと慟哭、悲しみと憤りを感じたが、それは自分がこれまで訪れた、どの戦場にもあるものだった。サイレンがけたたましく鳴り響き、都市の機能が完全に麻痺した街を歩いて帰宅した。部屋に戻るとガスも電気も止まっていた。私はろうそくに灯をつけた。それまで何十回も戦場でそうしてきたのと同じように。ただ違うのは、ここが自分の家だということだけだった」

9.11以前も戦争はあった。でもやはり9.11以降世界は変わったとナクトウェイはいう。

「それまで私はレバノン、パレスチナ、イラクなどさまざまなイスラム諸国の戦争を20年以上にわたり撮影していたが、ずっと私は別々の事柄を追っているのだと思っていた。
しかしそれが9.11の瞬間、グラウンドゼロの現場でひとつに結晶化した」
「イスラム社会は、ずっと以前から悲鳴をあげていた。それを私は知っていた。」

後半は、フォトジャーナリスト広河隆一からの質問形式。キャップをかぶり、ポケットのたくさんついたカーキのジャケットという広河さんは、クールなナクトウェイよりずっと戦場写真家のイメージに近かった。日本にフォトジャーナリズムが根付かないことを嘆き、すごい写真が撮れた撮れたと大喜びをする若い写真家のモラルの低さに憤り、《デイズ・ジャパン》のような硬派な雑誌を「怒りが僕にこれをさせる」といい、いまだデジタルにはなじめず、フィルムの味わいを大切にするヒューマニスト広河さんの言葉は、人々の共感を誘う。
それに対して、ナクトウェイの答えはすごく合理的だ。フィルムもデジタルもあまりこだわらない、日本人が他の国の人よりも冷たいだとか、世界に関心がない人々だとは思わない。時にコマーシャルを優先せざるを得ないエディターの立場も理解する。
そうなんだ、問題は編集者が悪いとかマーケットが悪いとか、政治家が悪いとかそういうレベルじゃない。

「私たち写真家は、自分の等身大をはるかに超えた途方もなく大きな重荷を背負っている」

ナクトウェイは、それ以外のものをすべて犠牲にして、写真家としての使命感だけで生きている人だ。人間の闇をいやというほど見続けながら、それでも「あきらめなければ、いつか変化は可能なものではなく不可避なものになる」と、本当に本当に信じている人だ。
そんな人の言葉に、たやすく共感してはいけない。
わかったようなふりをしたり、お手軽な敵を見つけて満足してはいけない。
でなければ、ナクトウェイの被写体に哀れみしか見いだせないだろうーーなんて、もっともらしいことを言うのもウソだ。
加害者と被害者は、あっという間に入れ替わる。

戦場写真を撮れる原動力は?という質問に、非常に困難な状況にあっても、たくましく生きるすばらしい人格をそなえた人々と出会ったこと、と答えたのがとても印象的だった。

「私の写真が人類の集団記憶のひとつになってほしい。決して忘れていけないものとして。なにもしなければ、世界は抽象的なままです」

参照:映画「戦場のフォトグラファー」について


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by voidchicken | 2006-05-01 15:22 | art days | Trackback | Comments(2)
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Commented by カメラマンK at 2006-05-03 21:59 x
ナクトウェイ氏はすごい。
しかしスライドショーでBGMに使用されていた音楽には違和感を感じた。まるでハリウッド映画のサウンドトラックみたいに聞こえるが、一枚一枚の写真の重みや、そこに写っている人のことが軽く見えてしまう。音なしで見せて欲しい。どう思いましたか。
Commented by sakagu at 2006-05-04 00:50 x
それは確かにそう感じました。ジャーナリズムのターゲットは大衆ですから、自然とわかりやすいBGMになったのでしょうね。音楽がくさくて写真が薄れるほどには弱い写真でなかったのが救いでしょうか。映画の方では、ナクトウェイがシャッターを切る音がなんとも無情でしたね。あ、非情ではなく。それにしても、カメラマンならではの見方ってあるんでしょうね。今度教えてください。


↑王様が見守ってるよ☆


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